クララが旅行に持ち歩いて いたグラス
クララが使っていたマイセンの蝋燭立て
クララが持ち歩いていたロベルトの額縁
表通りに面した部屋の西側には、ガラスケースに入れられた夫妻の思い出の品が飾られています。
クララが演奏旅行に持ち歩いた、グラス(グラスの入っていたのが隣の箱です)、蝋燭立て、そしてロベルトの額縁を目の前で見ると、クララの几帳面さが伝わってくるようでとてもドキドキしました。特にこの額縁の入ったケースの蓋に書かれているRobertの文字はロベルトの直筆によるものだそうです。
箱の中の黄色い紙には、この額縁は(普段)彼女の仕事用の机の上に置いていたとも書いてあります。
ペータース版の歌曲集の中表紙にもこのロベルトの絵が印刷されているので、私が最初に覚えたロベルトの顔もこのお顔でした。
さて、ガラスケースの中には実際に使 われていたものや自筆譜のコピー、手紙などが飾られている他に、ロベルト・シューマンの著書“音楽的になるための日常生活と人生の規則”が展示されていました。
記念館には本の内容を数ページコピーしてあり、ドイツ語記述を館長・ラブゼックさんがご紹介してくださいました。ここに書かれていることをいくつか訳して(かなり直 訳ですが)ご紹介しますね。
・聴覚を培うためには、充分早い時期から調性と音階を聞き分けられる訓練をすべきである。 鐘の音、窓を叩く音、鳩時計の音など(聞こえた音が)、どんな音か(音階のどの音か)耳を澄ますべきである。
・早い段階でハーモニーの規則を学びなさい。そして楽典を学ぶことに恐れを抱いてはいけない。
理論を学ぶことも大変重要なことである。
・練習をする時には、ピアノの鍵盤を半分だけ沈めたような中途半端な練習ではなく、また曲を途中で途切れさせることなく最後まで演奏し続けなさい。
・演奏は絶対に早過ぎず、遅過ぎず、決められた速度で演奏されるべきである。
・自分にとって簡単な曲を鍛錬し、よく、素晴らしく演奏すべきである。これは難しい曲を中途半端に演奏するより重要なこと である。
・楽器は常によく調律、手入れされているべきである。
・ピアノでメロディーをなぞることができるだけではなく、楽器に触れていない時に歌い、頭の中でハーモニーを奏でられることは重要なことである。
またこれらの他に、ラブベックさんの好きなフレーズを口頭で紹介してくださったところによると「甘いものや焼き菓子などは健康な子供に向いている食べ物ではない。ここに含まれているものは精神的にも脳のためにも強過ぎている。素晴らしいマイスターと言われた人達はこの規則を守っていた」という記述もあったそうです。
確かにドイツでは、子供への甘いものの管理は常に賛否両論、論議のテーマです。体 型のことよりも脳への影響を注意し、考えてみると娘達の親の間でも常に話題になっているような気がします。
私にとってはすでに遅い教育や方針もありましたが、普段無意識に何気なく気にせずにいることを認識することが時に重要であると改めて考えさせられました。非常に興味深いシューマンの書いた規則本でした。
この本はフランツ・リストによってフランス語に、 また英語にも訳され3ヶ国語で出版されたそうです。
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