シューマン記念館(デュッセルドルフ)を訪れて⑤

 日本式3階建の1階部分の一室のみの公開であるこのシューマン記念館の最後の南側の壁部分を、続けてご紹介していきます。

 写真左側に写り込んでいる胸像、見えますか? これはロベルトがまだ生きていた1852年に製作されたロベルトの胸像になります。
 この作品は、当時デュッセルドルフ美術大学で働いていたヨハン・ペーター・フォン・ゲッティング(当時58歳) がすべて形取り作製しました。この作品が作製されている最中、ロベルトはちょうどミサ 曲ハ短調“ミサ・サクラ”の作曲中だったそうです。
 この胸像はロベルトが生存中に作製された唯一の作品ですが、この時にクララの胸像も一緒に作製されたそうです。現在に至るまで残念ながらまだ発見されていませんが、いつかこのシューマン記念館がこの建物3階までの全体を使った大きなものになる頃までに発見され、一緒に展示されるといいですねと館長・ラブゼックさんともお話ししました。

 胸像の右横に続く南の壁には、ロベルトがデュッセルドルフで作曲した作品の表題紙が、壁一面に飾られています。有名な交響曲第3番変ホ長調“ライン”、ラインワインの歌による祝祭序曲 Op.123 など、ラインラント地方ならではの作品の他に、レクイエム Op148、ミサ曲など宗教的な曲も目立ちます。

「シューマンがデュッセルドルフにやってきたのは、第一に、市が高給を保障している音楽監督という公職への依頼があったこと。生活が安定することは何より家族のためでもありました。けれど、彼の考えるコンサートプログラムの選曲と、彼の指揮は楽団の人間からも強い非難を浴びてしまいました。このようなロベルトを悩ませる出来事が彼の精神状態を不安定にさせて行く中で、作曲活動は彼にとって貴重な大切なものであり、またその機会を与えられることも多かったのです。」と館長・ラブゼックさんは語ってくれました。

 この作曲活動の中に、デュッセルドルフのビルカー通りに越してきたからこそのエピソードがあります。
 シューマン夫妻の住居の側には、今も旧市街のシンボルとなるマックス教会とランベルトゥス教会という市内でも有名な 二つの大きな教会があります。
マックス教会
(あまりにも真下からの撮影となってしまってすみません)
ランベルトゥス教会
第2次世界大戦時に一度爆撃を受け、塔が砕け落ちてしまいました。その後再建されましたが、再建の際曲がって再建されてしまったため、形が歪になっています。
 この教会は姉妹教会でどち らもカトリックの教会です。ロベルトはプロテスタントでした が、この双方の教会から、ソロ、合唱、楽器を使った教会用の曲の作曲を頻繁に依頼されていました。それぞれの教会に提供することもあれば、同じ曲を双方の教会に提供することもあ ったそうです。そして、この二つの教会の数々の依頼はレク イエムやミサ曲の作曲につながったと考えられてもいるそうです。
 普段のミサのためにロベルトによって作曲された曲もあるそうなので、いつかこの教会でロベルトも耳にしたであろう彼の作品を聞いてみたいですね、というお話にも花が咲きました。私の娘(長女)は偶然この教会で洗礼を受けているので、教会の方にいつかお話ししてみたいと思います。

 たった一室の記念館を1 時間近くかけて、丁寧に親切に説明し紹介してくださった館長・ラブゼックさん。そこにはラブゼックさんなりの想いと理由があると言います。
 
 1800年頃建築されたこの建物は、現在、当時のそのままの状態で現存しています。一切の修理などの手が加えられていません。ですから、市はこの建物を歴史的重要建築物として扱い、現在の建物の激しい老朽化に伴い保護・修復工事を予定しています。ですが、この建物にはまだ住居人がいらっしゃるのです。このご家庭はすでに長くここに住み、現在も退去を望んではいません。保護・修復工事の後、また同じ住居に住むことをお約束する、と市が交渉しても、工事の後戻ることができるかどうか確信が持てないとおっしゃっているそうです。結果この工事の予定は延期を繰り返し、 計画も暗礁に乗り上げているのだそうです。
 ラブゼックさんはこの問題を「非常に複雑な問題だ」と語ります。確かにシューマン家の最期の家を守りたい、建物全体を記念館としてもっといろんな方に訪れてほしいとだけは言えません。しかし一方でラブゼックさんも市も「早くしないと保護作業さえもままならなくなる」という不安を抱えています。また「記念館」と呼ばれながら1室のみの公開しか許されないため、非常に大きな期待を抱いて楽しみにやってくる訪問者の期待 に応えられない歯がゆさがある、ともラブゼックさんは話してくれました。

 現在、市の持ち物となり公開されているこの記念館は無料で訪問者へ公開されています。
 記念館の小ささを申し訳なさそうに詫びるラブゼックさんは、だからこそ自分が語ることでシュー マン家を身近に感じ、ロベルトやクララの息吹を感じてもらえたら、と願っているような気がしました。

 ここにはまた、この記念館の最新情報をアップしていきたいと思っています。デュッセルドルフへお越しの際はぜひ来館ください、と言いたいのですが、予約、または開館時間の訪問が可能かどうかご確認されることをお勧めします。ご案内は下記の通りです。

■シューマン記念館 (住所:Bilkerstraße 15 40213 Düsseldorf)
開館時間: 火曜~木曜(祝日以外) 9:30~17:00
(入場無料ですが“ブタの貯金箱”に小銭の寄付を下さ るとありがたいとのこと)

下記の連絡先に訪問時間を伝えると確実です
電話: +49-(0)-211-131102
Fax.: +49-(0)-211-327083
Email: info@schumann-gesellschaft.de
Internet: www.schumann-gesellschaft.de
 上記の開館時間以外に訪問の方はハインリッヒ・ハイネ博 物館に問い合わせることができます。

■ハインリッヒ ハイネ博物館 (住所:Bilkerstraße12-14 40213Düsseldorf)
開館時間: 火曜~金曜 11:00~17:00
                土曜 13:00~17:00
      日曜 11:00~17:00 
こちらでもシューマン夫妻の作品、写真、手紙、自筆譜などが展示されています。

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