Facebook投稿【クラシック音楽バトンリレー】より
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【クラシック音楽バトンリレー第3日目】
マーラーの歌曲に取り組む時、譜読み段階でいつも<ドイツ語の詩と曲の融合>に脱帽
しています。
どうにも甘くなりきらないドイツ語の(発)音を、言葉自体が無限の可能性を持って
人の心に届くように作曲されている、言語の音に忠実以上の旋律で表現されている…
だからこそ、言葉だけの詩からは想像できないほど広げられたマーラーの世界観を
『そのまま聴いてほしい』と言う欲求に駆られるのです。
(そして歌い手の表現として、作曲家の世界観をそのまま伝えようとすることが最も
困難です😭)
第3日目は、マーラーの<リュッケルトによる5つの歌>から≪Ich bin der Welt
abhangen gekommen(わたしはこの世から離れた)≫について書きたいと思います。
このドイツ語の“abhanden”と言う言葉の意味を考えても、この曲には、<この世と
死がもたらす向こう側の世界>と<俗世と俗世から離れた世界>の二つの視点を感じま
す。そしていずれにしても、後者の二つの世界から見た感覚を<洗練された精神性>
を持って淡々と語っています。
演奏家はそれぞれこの曲を読み込みながら、どちらの世界をどんな視点を持って
表現しようとするのか、年齢や経験によっても変わるのだろうと思いますが、今日は
1957年に録音されたクリスタ・ルードヴィッヒがピアノと協演している演奏を
ご紹介したいと思います。
(この曲はピアノ伴奏とオーケストラ編成で作曲されたものと二つありますが、
マーラー は先にピアノ伴奏の作品を完成させています。歌曲独特の細やかな表現は
オーケストラとの演奏とは違う味わいが感じられると思います)
↓
https://youtu.be/puyusNXkcj4
現在92歳になるメゾ ソプラノ歌手クリスタ・ルートヴィッヒは、以前、
インタビューで「自分が亡くなったら、私の葬儀にはこの曲を☺️」とおちゃめな顔で
話していました。
『私は1人で生きている。私の天国(空)の中で。私の愛の中で。私の歌の中で』。
この歌曲の最後のページに込められた言葉の音と音楽のすべてが、身体中の細胞に
浸透して、細胞の粒が震え、その粒々からさらに感動が込み上げてくるような体験は
深い<洗練された精神性>と、音楽だからこそ表現できる世界を視せていると感じます。
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